Five Graphic Music Analysesの"Ich bin's, ich solle büssen"の分析を見た.
Url.Tafelから3.Schicht, 2.Schicht, 1,Schicht, Ursatzと見比べていくと,
VossのアルゴリズムでfBm信号を生成する過程の逆に似ていると思った.
VossによるfBm生成過程は,あるサンプルと直後のサンプルとの中点に乱数を加算し,サンプルを増やしていくことだ.
シェンカー分析において表層から深層にたどる過程は,増えていったサンプル(=労作された音符)を取り除いていくことだ.
旋律生成のために頭音を労作する方法が同書の分析から読み取れる.
- 頭音(3^, 2^, 1^)を二点に配置し,その二点を滑らかにつなぐ.
- 例1:"Ich bin's, ich solle büssen"のような場合
- e(3^) e(3^):二点に配置する.
- →e(3^)-d-c-d-e(3^):滑らかにつなぐ.この場合はe-(三度下降)-c-(三度上昇)-e
- 例2:BWV 846のような場合
- e(3^) e,(3^):二点に配置する.二つ目のeはオクターブ下
- →e(3^)-d-c-h-a-g-f-e(3^)
以上のような労作の方法は『調性音楽のシェンカー分析』に網羅的に示されていたが,感覚的にわかりにくかった.
Five Graphic Music Analysesでは,1曲全体を複数の構造レヴェルで分析した結果が示されており,感覚的にわかりやすい.